先日、図書館の貸出落ちの廃棄本配布に行ったのですが、その中に古い恐竜図鑑がありました。
この恐竜研究という分野は、この10年ほどで、さらにだいぶ進歩しているようです。
ということで、古い恐竜図鑑はお役御免なんだろうな…と思い、通り過ぎたわけですが・・・。
その進歩した恐竜研究のなかでも、以前の研究と全く違うのが、羽毛恐竜の存在。
今回は、そもそも羽毛恐竜とはどんなものなのか?羽毛恐竜から鳥への進化、鳥類の境目、始祖鳥との違いをメインに解説していきます。
記事の最後では、羽毛恐竜の本も紹介します。
羽毛恐竜とは?
羽毛恐竜とは、化石により羽毛の痕跡が認められる恐竜のこと。
はっきりと視認できるもののほか、成分分析、そして骨格などの研究から、現在では少なくとも一部の恐竜が、羽毛もしくは羽毛の原形となる体毛をはやしていたことが確実視されています。
羽毛恐竜の化石
恐竜に羽毛が生えていた可能性については、1861年の始祖鳥の化石発見以降、長い間議論の的でした。
始祖鳥は翼を持ちますが、肉食恐竜のような鋭いかぎ爪、骨のあるしっぽなど、爬虫類の要素もあったことから、羽毛恐竜について存在を期待されていました。
そして1996年、ついに恐竜の骨格を持ち、羽毛をもつ羽毛恐竜の化石が中国・遼寧省の下部白亜系熱河層群の化石密集層から見つかったのです。
細密な火山灰に包まれたことで、奇跡的に良好な保存状態で発見され、羽毛の表皮構造もよく見ることができます。
シノサウロプテリクスというこの恐竜は、中国表記では中華竜鳥とされています。
羽毛といっても、この羽根は、ダウンのような綿毛か、それよりも原始的な皮膚表面のケラチン質が伸長したチューブ状のものであるといわれます。
羽毛は最初、飛ぶためではなく体温維持に有効だったものと推測されてます。
変温動物の爬虫類は温度により活動が制限されますが、羽毛をもつことによって昼夜問わず活動でき、そのために爬虫類よりも幅をきかせることができたと考えられています。
羽毛恐竜の色などの特徴
ここでは、羽毛恐竜の色などの特徴についてみていきます。
化石内の羽毛部分にはメラニン色素が残っており、それを解析し、羽毛がどのような色であったかが検証されています。
現代の鳥類のメラニン色素と羽の色の関係をデータ化し、恐竜の羽はどのように見えていたかを推定しています。
最初に見つかったシノサウロプテリクスは、頚部後ろから背中や尾にかけて、赤褐色ないしは橙色に近い色彩の羽毛を持っていたとされています。
腹側は白、尾は茶と白の縞模様であったことが判明しています。
また、アンキオルニスは、全体は暗い灰色で、顔には赤褐色の斑点、そして翼の一部は白い帯状の筋が入っていることも判明。
このように、体の部位によって色が異なった模様をしていることがわかっています。
この方法で、90%以上の確率で色がわかるようになったそうですが、実際に色がわかっている恐竜は、10種類程度だとか。
大事な化石を切り取り電子顕微鏡を覗き、色の組織を見つけ・・・という、途方もない細かい作業を繰り返して色の判別をおこなっています。
始祖鳥も一部が黒かったということはわかっているそうですが、この障壁のために、それ以上の研究が進んでないそうです。
そして現在までに色がわかっているのは、ジュラ紀~白亜紀の羽毛のある恐竜のみ。
それ以前では、羽毛恐竜の化石が見つかっていないため、手がかりがないのだそうです。
羽毛恐竜から鳥への進化について
羽毛恐竜から鳥への進化というのは非常に興味深いことです。
アンキオルニスのように頭頂部が赤い恐竜がいることなど、羽毛恐竜の色の研究が進むにつれ、羽毛恐竜の生態に新しい考察が加わってきました。
それは、羽毛恐竜の脳も鳥のように進化しているのではないか、という点だそう。
爬虫類は嗅覚が優れているそうですが、鳥類は色とりどりの羽を持つ現在の鳥類からわかるように、視覚が優れているのだそう。
色覚が重要なコミュニケーションをもっていることがわかります。
羽毛恐竜も色でコミュニケーションしていたのだとしたら、現代の鳥に近いことが想像できるとして話題になっています。
羽毛恐竜と鳥類の境目
次に、羽毛恐竜と鳥類の境目はどこにあるのか?
そんな疑問が湧きます。
1861年に発見された始祖鳥とは日本における呼び方で、アーケオプテリクス(太古の翼)という名がついています。
このアーケオプテリクスは鳥の祖先とされていましたが、近年、アーケオプテリクス前後に存在した羽毛恐竜が数多く発見されていることから、翼状のものがあるだけではこのアーケオプテリクスが境という見方も薄くなってきたようです。
恐竜と鳥の境は現在も議論されているところです。
ただ、現代の鳥の視点からみると、鳥の定義は、「翼状の構造が見られること」か、翼を支える「大胸筋が付着できるような竜骨突起が見られること」かの2つの立場があるそうです。
そんな現代の鳥研究者から言わせると、アーケオプテリクスのほか翼をもつ羽毛恐竜(ミクロラプトル、アンキオルニス)は、胸骨に突起がそんなになく、飛べるほどの能力はなかっただろうということから、恐竜に近いと言われています。
羽毛恐竜と始祖鳥との違い
アーケオプテリクスは、よく発達した風切羽の様な羽があるとされます。
それは、現在の鳥類の翼に見られる羽枝、小羽枝(羽枝に生じる小毛)、小鉤(小羽枝に生じる小突起)の3部構造をとっています。
しかしながら、長く飛ぶことはできず、脚も枝をつかめる構造ではなかったことから、他の恐竜のように地上で生活していたと推測されています。
羽毛恐竜の本を紹介!
最後に恐竜好きな一般の方でも楽しめる羽毛恐竜の本を紹介します。
記事冒頭でも申し上げたように、恐竜については日々変化している研究分野です。
発行年月日が新しい本の方ができるだけ新しい情報が含めれているでしょうから良いと思います。
羽毛恐竜ー恐竜から鳥への進化ー
大島 英太郎 作 / 真鍋 真 監修
福音館書店(福音館の科学シリーズ)
2018年03月15日
羽毛恐竜の専門本。
新版 恐竜の世界 DVD付 恐竜の進化と絶滅の謎をさぐる! (学研の図鑑)
著者/編集:真鍋真
学研プラス
2018年11月20日
第3章鳥類は恐竜だった!で詳しく説明されています。
大人の恐竜図鑑 (ちくま新書)
北村 雄一
筑摩書房
2018年3月6日
文章とイラストで解説。鳥類への進化も余談つきで熱く語られています。
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